窒素とは
窒素とは
- 窒素(英名:Nitrogen)とは、地球上に存在する無色無臭の気体であり、窒素分子(N2)としては、空気の構成比率で約78%と最も多く含まれています。
- 空気と比較したときの重さはやや軽く(比重:0.967)水には溶けにくい性質を持っていますが、「安定した不活性ガス」でありアンモニアやたんぱく質といった「窒素化合物」として、自然界で広範囲にわたり存在しています。
- 窒素の主な成分は次の通りです。
化学式 | 原子番号 | CAS No. | 分子量 | 比重 | 大気成分 | 沸点 | 融点 | 臨界圧力 | 臨界温度 | JIS規格K |
N2 | 7 | 7727-37-9 | 28.02 | 0.967 | 78.03vol% | 77.3K | 63.3K | 3.29MPa | 125.5K | 1107 |
窒素の相図
窒素の状態(固体・液体・気体)と熱力学的な状態量の関係を表したものです。物資がある相から他の相に変わることを相転移と言います。以下に単語の意味を説明します。
- 溶融・融解:固体が液体に変化する現象
- 溶融線・融解線:固体から液体への変化を示した曲線
- 沸騰:液体が気体に変化する現象(この温度が沸点)
- 凝縮:気体が液体に変化する現象
- 沸騰線(蒸気圧曲線):液体から気体への変化を示した曲線
- 凝縮線(蒸気圧曲線):気体から液体への変化を示した曲線
- 昇華:固体が液体にならずにそのまま気体になる現象(この温度が昇華点)
- 昇華線:固体が液体にならずに気体の状態を示した曲線
- 三重点:固体・液体・気体の状態が同時に存在する
窒素の用途・利用例
窒素が利用される産業
窒素ガスは、化学・電気機械・鉄鋼・食品・輸送・半導体関連・医療と様々な産業で使用されており、製造業の約8割が何らかのかたちで使用されていると言われています。一般社団法人日本産業・医療ガス協会(JIMGA)の統計によると窒素ガスの国内販売量及び用途別のシェアは次の通りです。
年度 | 窒素(N2) |
2019年度 | 4,277百万m3 |
2020年度 | 4,111百万m3 |
2021年度 | 4,300百万m3 |
窒素の主な市場及び用途
主な市場及び用途を下表に記載します。
市場 | 窒素(N2) |
半導体・液晶 | ・製造工程(ダイシング・前洗浄・成膜・エッチング・露光・後洗浄他)でのパージ用・キャリア・防爆・酸化防止 |
電子部品 |
・接続部品(スイッチ・コネクタ等)製造におけるプロセスガスパージ ・プリント基板への実装時の不活性雰囲気・熱置換 |
金属加工 |
・ステンレス切断(無酸素切断・クリーンカット) ・ステンレス切断面の変色防止(酸化防止) ・高反射材(アルミ・真鍮・銅など)切断の加工速度上昇 ・金属3Dプリンタの造形(チャンバー内の雰囲気) ・非鉄などの低温焼鈍や焼き戻しなどでの酸化防止 |
化学 |
・危険な化学品の基準値(可燃性・毒性等)を下げるためのN2置換 ・特殊高圧ガス(モノシラン・セレン化水素等)の製造工程での防爆 ・特殊な化学品が混合・反応防止のための雰囲気 |
機械 |
・射出成型時の雰囲気 ・ゴム製品製造装置のバリ取り ・製造装置本体の酸化防止 ・変色防止 |
食品 |
・鮮度保持 ・冷凍食品加工 ・ポテトチップスやスナックなどの酸化防止 ・清涼飲料水やアルコール飲料の溶存酸素除去 |
船舶 | ・パージ、防爆 |
医療 |
・日本薬局方酸素と混合し合成空気を製造 ・注射剤等の製造時の酸化防 |
窒素の製造方法種類
PSA式窒素発生装置
PSA式窒素ガス発生装置は酸素分子を選択的に吸着するCMSを採用することで清浄な圧縮空気から窒素ガスを連続的に取り出すことができます。まず原料となる圧縮空気をコンプレッサーから供給し、清浄な圧縮空気となるよう水分、油分、パーティクル等を除去します。次に浄化された圧縮空気はCMSが充填された吸着塔に導入され酸素分子が吸着除去された後残った窒素ガスが取り出されます。CMSは酸素分子を一定時間吸着することで飽和に達するためもう一方の吸着塔へ切替え連続的に窒素ガスの精製を行います。一方、飽和に達した吸着塔は大気圧に解放されることで酸素分子の脱着を図り元の状態へ再生させることができます。吸着塔から取り出された窒素ガスは製品槽に導入され圧力変動を緩和した後、減圧弁で調圧され製品窒素ガスとして供給されます。
膜分離式窒素発生装置
膜分離装置は一般的に中空糸が使用され、空気中の窒素より酸素を透過しやすい性質を利用したものです。中空糸には主に高分子膜が使用され空気中の各ガス成分の透過速度の差(選択透過性)を利用して、酸素、二酸化炭素、水分などの透過速度の速いガスと、窒素、アルゴンのような遅いガスとを分離し、空気中の成分より窒素ガスを取り出すシステムです。これは中空糸が空気中の窒素より酸素を透過しやすい性質を利用したもので、圧縮空気がN2セパレーターとして中空糸の内側を流れていく間に、酸素分子が選択的に膜を透過し、その結果中空糸内にとどまった窒素富化ガスが製品ガスとして取出される仕組みです。
深冷式窒素発生装置
深冷式(深冷空気分離とも言われます)は、空気中の成分を沸点の違いにより分離する方法です。物質には三態(固体・液体・気体)と言われる状態が存在し、固体が液体になる温度を融点(Melting Point)、液体が気体になる温度を沸点(Boiling point)と言います。空気中の主な各成分(酸素・窒素・アルゴン)の沸点(大気圧下)は次の通りです。
酸素(O2) | 窒素(N2) | アルゴン(Ar) |
-183.0℃ | -195.8℃ | -185.8℃ |
化学反応や燃焼等はなく、物理操作(ガスの圧縮・冷却)のみで製品ガスを製造でき、また、空気自体は毒性もなく、安全な製造方法です。深冷式による空気分離方法の簡易な流れは次の通りです。
①ろ過器(フィルター)により原料空気中の不純物(粉じん等)を除去
②原料空気を圧縮機により約0.5MPaまで圧縮
③圧縮した原料空気を常温付近まで冷却
④低温で固化する水分ならびに二酸化炭素を吸着除去
⑤分離機にて導入した原料空気を熱交換器で-170℃近くまで冷却
⑥精留塔にて導入した原料空気を各成分(酸素・窒素・アルゴン)の沸点差を利用して分離
⑦分離された製品ガスを熱交換器で常温付近まで加温
⑧必要に応じて、製品ガスを圧縮機で圧縮後、消費先へ供給
窒素の供給形態
お客様の窒素ガス使用量や使用形態に応じて、さまざまな方法でガスを安定的に供給しております。お客様の所在地に関係なくガスをお届けする、シリンダー・LGC・カードル・ローリーから、窒素ガス発生装置にて24時間供給できるオンサイトまで、供給方法は多岐にわたります。
シリンダー供給
工業用・商業用から研究用まで、さまざまな用途への少量供給が可能です。製造工場で生産した液化ガスは、液化ガスローリーによって充填所まで輸送し、充填所に設置されたCEタンク(液化ガスを貯蔵する大型タンク)に納入します。そして、これを容器に小分けし、トラックに搭載してお客様のもとまで運送します。シリンダー供給は次の4種類存在します。
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シリンダー(ガスボンベ)
シリンダーによるガス供給は、最も一般的な方法の一つです。流通しているシリンダーの多くは47L容器(通称:7m3容器)であり、多様な目的に使用することができます。
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ガスカードル
複数のシリンダーを集合させ、ラックにセットして使用します。単位時間あたりの高圧ガス流量が大きい場合、昇圧の限界が高いガスカードルによって対応することができます。
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LGC(超低温液化ガス容器)
液化ガスを小分け充填してトラック運送できる可搬式容器です。シリンダーと同様にトラックへの積載が可能で、比較的少量のガスを液化状態で使用されるお客様に最適な供給方法です。使用時には、蒸発器を用いてガス化します。
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デュワー容器
液化ガスのロスが少ない低温断熱容器です。エア・ウォーターでは主に、MRI装置など理化学分野向けに液化ヘリウムを供給するために、ヘリウムデュワーを取り扱っています。
液化ガスローリー供給
窒素の大量輸送には、液化窒素ローリーが有効な供給方法となります。大型オンサイトプラントや液化窒素発生装置で生産された液化窒素を、お客様の工場や充填所まで輸送します。お客様の工場内に設置されたCEタンク(液化ガス貯槽)に移された後、液化窒素を蒸発器で気化して工場までパイピング供給されます。
オンサイト供給
オンサイト方式のガス供給によって、常に大量の窒素ガスを必要とするお客様のニーズにお応えしています。極低温による深冷空気分離方式、常温でのガス吸着分離方式など、製造設備の種類はさまざまです。
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深冷分離式窒素ガス発生装置
工場敷地内に窒素ガス発生装置を設置して窒素ガス供給を行うガス製造設備です。オンサイトやガス発生装置における最大の特長は、ガスパイプラインによってガス生産設備とお客様工場を直結している点にあります。これにより、大量のガスを常時欠かすことなく供給することが可能となります。
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PSA式窒素ガス発生装置
PSA式窒素ガス発生装置は酸素分子を選択的に吸着するCMSを採用することで清浄な圧縮空気から窒素ガスを連続的に取り出すことができます。まず原料となる圧縮空気をコンプレッサーから供給し、清浄な圧縮空気となるよう水分、油分、パーティクル等を除去します。次に浄化された圧縮空気はCMSが充填された吸着塔に導入され酸素分子が吸着除去された後残った窒素ガスが取り出されます。CMSは酸素分子を一定時間吸着することで飽和に達するためもう一方の吸着塔へ切替え連続的に窒素ガスの精製を行います。一方、飽和に達した吸着塔は大気圧に解放されることで酸素分子の脱着を図り元の状態へ再生させることができます。吸着塔から取り出された窒素ガスは製品槽に導入され圧力変動を緩和した後、減圧弁で調圧され製品窒素ガスとして供給されます。