リンの基礎知識とリン含有水の処理方法
目次
2.リンの水処理基準
3-1.凝集沈殿法
3-2.晶析脱リン法
3-3.生物処理法
3-4.吸着法(READ-P)
3-5.処理方法まとめ
リンは、産業系排水などによってわずかな量でも河川に流出すると、自然界のリンの濃度が変動してしまい、富栄養化する可能性があります。そのため、排水する際には決められた基準値まで含有量を減らす必要があります。当記事では、リン含有水の排水処理技術の種類と各処理方法の長所と短所を解説します。
リンの排水処理における基本的な知識と必要性
リンは、地殻中に広く存在する元素で、岩石や土壌を出発点として雨水や流水中に溶解しており、生活系排水や産業系排水から排出されることにより河川や海におけるリンの濃度が変動する要因になります。仮に濃度が上がってしまった場合、栄養塩が増加し、富栄養化になり、赤潮やアオコなどの原因となります。
リンの水処理基準
湖沼や沿岸海域の富栄養化を防ぐため、リン含有水は環境省が定めた一律排水基準値である16mg/L(日間平均 8mg/L)を満たさなければなりません。ただしこの基準は、燐(りん)が湖沼植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある湖沼として環境大臣が定める湖沼、海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある海域として環境大臣が定める海域及びこれらに流入する公共用水域に排出される排出水に限って適用されます。
リンが含まれている排水の処理方法
リン含有水の排水処理方法には、凝集沈殿法、晶析脱リン法(晶析法)、生物処理法、吸着法と、それらの組み合わせ方式があります。
各処理法の特長については以下の比較表を参照してください。
凝集沈殿法 |
晶析脱リン法 |
生物処理法 |
吸着法
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技術の特長 | アルミや鉄などの凝集剤を加えてリン化合物として析出させ沈降除去を行う | カルシウムとアルカリを加えることでハイドロキシアパタイトを晶析させ回収する | 活性汚泥中の細菌の働きを利用し汚泥へのリン含有量を高めることで、排水中のリン濃度を低下させる | 吸着剤を充填した塔に原水を通液することで液中のリンを吸着除去する |
処理濃度 | 低濃度まで処理可能 | 高度処理は難しい | 濃度が高い場合、処理残しが起こる場合あり | 低濃度に安定して処理可能 |
汚泥について | 大量に発生 | 生成物は汚泥ではなく肥料等として活用も可能 | 相応に発生 | 汚泥は発生しないが再生時に高濃度の廃液として発生するため、別途処理が必要 |
運転管理 (装置管理除く) |
薬注量確認と汚泥の処理が必要 | 薬注量などコントロールが必要 | 生物処理であるため、水温など管理が必須 | 吸着塔回りだけなら基本自動化が可能酸アルカリの補充は必要 |
長所 | ・薬剤価格が安いため、高濃度域の処理において効率が良い | ・回収したリンを汚泥として廃棄せず肥料として活用することが可能 | ・処理コストは安価、生物脱窒法と組み合わせることで硝酸も同時に除去可能 | ・低濃度域においては効率良く、且つ低濃度まで安定して処理が可能
・濃度変化に強く、多少変動しても処理は可能であり、また運転管理も比較的容易である |
短所 | ・汚泥が大量に発生するため、その処理コストが掛かる | ・低濃度では効率悪く、別途濃縮のための前処理が必要となる | ・処理率は高くはない、排水の組成が不安定な場合は処理が難しい | ・高濃度処理は再生周期が短くなる ・再生廃液の別途処理が必要 ・初期設備投資がある程度必要 |
処理方法まとめ
リン含有水を処理する方法は、一般的に凝集沈殿法と生物処理法が利用されています。
凝集沈殿法は、アルミや鉄などの凝集剤を加えることでリンをリン化合物として析出させて、沈降除去を行う方式です。特に高濃度域での処理効率が良い点が特長的です。しかし、汚泥が大量に発生するため、処理コストがかかるというデメリットもあります。
リンの排水処理で吸着剤を使用するなら「READ-P」
吸着法は吸着剤を充填した塔に原水を通液することで液中のリンを吸着除去する方法です。
吸着法を用いた水処理用吸着剤READ-Pとは、希土類を用いた吸着剤の頭文字(Rare earth
adsorbent)を取って名付けられた商品「READシリーズ」の中で、リンを対象としたセリウム系リン吸着剤です。
READ-Pは水中に存在するリン酸イオンに対して、高い選択吸着性を発揮します。主に金属表面加工工場にて導入されており、運用コストの削減に寄与しています。
リンの排水処理で凝集剤を使用するなら「READ-CX」
リン含有水の排水処理技術である凝集沈殿法で使用する凝集剤には「READ-CX」がおすすめです。「READ-CX」は、従来の凝集剤とは異なり、以下のようなメリットがあります。
- 1. READ-CXは、少ない薬剤使用量で処理が可能であるため、汚泥発生量を大幅に削減できます。
- 2. ハンドリング性が良い液状であるため、既設の置き換えも容易。
- 3. 初期設備投資のコスト削減に繋がります。
上記に加えて、READ-CXは、リン以外にもホウ素、フッ素、ヒ素、セレン、六価クロム、鉛等の元素も処理することが可能です。