プラズマ処理とは?表面改質の原理と特長を解説
プラズマ処理とは、その名の通り「プラズマ」を利用して表面処理を行う技術です。
一括りにプラズマ処理といっても処理方法には種類があり、使用するガスによっても効果は変化します。
この記事では、プラズマの仕組みからプラズマ処理の効果などをわかりやすく解説していきます。
現在お使いの表面改質方法からプラズマ処理への移行をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもプラズマとは?
物質は与えるエネルギーによって固体から液体、液体から気体へとその姿を変えていきます。
気体にさらなるエネルギーを与え続けると、気体中の原子や分子が電離し、プラスの電荷を持つ「正イオン」とマイナスの電荷を持つ「電子」に分かれた状態になります。
この状態を「プラズマ」と呼び、固体、液体、気体に続く第4の状態と言われています。
自然現象であれば「カミナリ」や「オーロラ」などがプラズマの一種です。
人工的に生み出されたプラズマは、化学反応や光、熱などに幅広く活用できます。
具体的には蛍光灯などの照明器具、プラズマ溶接、樹脂の表面処理、フィルムの表面処理に使われています。
ここからは製造業界で利用されている、「プラズマ処理」を解説していきます。
プラズマ処理の概要・特長について
「プラズマ処理」はさまざまな基材の表面処理技術として知られています。
では一体、どのようなプラズマが活用されているのでしょうか?
プラズマ処理の特長と合わせてご紹介します。
プラズマ処理の概要
製造業界で活用されるプラズマは、大きく分けて「高温プラズマ」と「低温プラズマ」の2種類あります。高温プラズマの温度は数千~数万Kに達し、その熱エネルギーを利用して核融合や、溶接・切断・溶射などに使われます。一方、低温プラズマの温度は室温~1000K前後で、表面改質や洗浄、殺菌・消毒などに活用されています。
一般的にプラズマ処理は、低温プラズマを利用して表面改質を行います。
ガラスやフィルムなどの基材基板の表面にプラズマを照射することで、表面に新たな機能を与えられます。
基材の乾燥工程や廃液などの処理が要らないため、環境面に優しく、省エネな処理方法です。
プラズマ処理を施せる基材は、樹脂や金属・ガラス、フィルムなど多岐に渡ります。
チューブ状などの複雑な形状でも対応できる魅力があります。
プラズマ処理の特長
プラズマ処理の代表的な特長は主に2つあります。
1つ目はプラズマ化させるガスの多様性です。
具体的には酸素や窒素、ヘリウムなど、プラズマ処理に活用できるガスは多種あります。
ガスの組み合わせによりプラズマの化学的な性質を変えられるので、基材の性質や与えたい機能に応じて選べます。
2つ目は、基材に与えるダメージが少ないことです。
プラズマがガス状態であるため、基材のごくわずかな厚みにだけ多様な機能を与えられます。
たとえば湿式の表面処理方法の場合、処理に使用する液体が基材の表面に残存すると、基材内部まで化学的作用を及ぼす恐れがあります。
プラズマ処理は乾式であるため、基材内部の性質を損なわずに表面改質を行えます。
また低温プラズマを利用しているので、金属に比べて耐熱性が低い樹脂などにも処理できます。
代表的なプラズマ処理の効果
ここからは代表的なプラズマ処理の効果である「親水化」「接着性改善」「洗浄」を紹介します。
親水化
親水化とは、水になじみやすくなることを指します。
ガラスの表面に親水処理をする場合、酸素(O2)プラズマをガラスの表面に照射します。
固体表面と液体との濡れ性を評価する「水接触角」を測定すると、処理前は41度だったものがプラズマ処理を施すことで5度以下まで改善した事例もあります。
接着性改善
プラズマを照射することで、樹脂-樹脂や樹脂-金属の接着力を高めることが出来ます。
プラズマガスが基材表面と反応することで、表面に親水性の官能基が形成され、接着剤との親和性を高めます(化学的効果)。また、表面に微細な凹凸が形成され、接着剤との接着面積を増加させます(物理的効果)。これら2つの効果により接着性が向上します。
洗浄
プラズマを照射することで、金属やガラス表面の有機物を除去することが出来ます。
プラズマ中で発生した酸素ラジカルが、基板表面の有機汚染物の炭素原子と反応して、CO2の形態で除去されることで、表面を洗浄します。
真空プラズマと大気圧プラズマの違い
プラズマ処理には「真空プラズマ」と「大気圧プラズマ」の2種類があります。
真空プラズマ処理は、密閉されたチャンバー内に基材を置き、内部に満ちたプラズマが基材表面に触れることで化学反応を起こします。
チャンバー内は真空であるため、少量のガスでも処理を行えるメリットがあります。
さらに表面処理中に不純物が混入するリスクも軽減できます。
真空プラズマ処理を行う際は、毎度、基材をチャンバーに入れて真空状態にする作業が必要なので、連続的に処理するのは難しいです。
一方で、大気圧プラズマは1対の電極に窒素や希ガスなどのガスを流し、高周波・高電圧を印加することにより、大気圧状態でプラズマを発生させます。
大気圧状態で放電させるため、連続的に処理することが可能です。また、真空ポンプや大型チャンバー等の真空設備が不要なので、設備費の削減や大型の基材にも対応することが可能です。
ただし、排ガスにオゾンが発生するため排気設備が必要です。
エア・ウォーターの「大気圧プラズマ」の特長
エア・ウォーターでは、大気圧プラズマ技術を確立し、ガラスや基板にプラズマを吹き付けて洗浄する「リモート型表面処理装置」、フィルムを高速・連続に処理する「ダイレクト型表面処理装置」、チューブの内面・外面を選択的に親水処理することが可能な「チューブ型表面処理装置」の3方式の装置を開発しました。
完全ドライによる製造ラインの簡素化、高速化
ドライ処理なため、ウェット処理が困難な基材にも適用が可能です。
薬剤を使用しないため環境に優しく、廃液処理コストも削減ができます。また乾燥工程が不要となるため、製造ラインの簡素化や工程の高速化に繋がります。
連続処理による高い生産性、低ランニングコスト
真空プラズマのような真空設備が不要ですので、設備費の削減や連続処理による高い生産性を実現できます。また、放電ユニット部分を既存の製造ラインに組み込むことも可能です。
処理ガスには希ガスの他、安価な窒素ガスを用いることもできますので、ランニングコストを安く抑えることができます。
大面積の被処理物や立体形状への適用可能
1000mmを超えるような大型基材への処理が可能です。
電極間で発生させたプラズマを基材に吹き付けて処理をするリモート型、プラズマ空間に直接基材を入れ込むダイレクト型、チューブ形状の処理に特化したチューブ型などの装置を取り揃えており、さまざまな基材への処理が可能です。
独自開発による高い処理性能、メンテナンス性を実現
電源や電極の独自開発により、他社製に比べてより高性能な処理が可能です。これにより高速処理や高生産性を実現できます。また、放電室構造の独自設計により、小型化、高メンテナンス性を実現しました。
適用分野例
エア・ウォーターの大気圧プラズマ装置はさまざまな場面でご使用頂いております。
事例について紹介します。